「脱毛症の原因は、男性ホルモン」と聞くと、よく勘違いをされますが、男性ホルモンそのものが脱毛症の原因になるわけではありません。本来、男性ホルモンというのは筋肉のある強い体をつくる、体毛を濃くして「男性らしさ」をつくる、という働きをするものです。では、なぜAGAでは「頭髪が薄くなる」という、まったく逆ともいえることが起こるのでしょう?
実は、男性ホルモンのひとつであるテストステロンが、悪玉の男性ホルモンに変換されることで、脱毛症を引き起こしているのです。テストステロンは、5α-リダクターゼ(還元酵素)と結合することで、DHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。このDHTは毛根に作用し、毛乳頭を萎縮させる強い力をもっているため、発毛を抑制してしまうのです。
まず、男性ホルモンのテストステロンと5α-リダクターゼが結合すると、皮脂分泌を促進するDHTに変化します。そして、DHTが出来ると、皮脂腺が活発になり過剰に皮脂が分泌されて毛穴の中にある角質と混じって毛穴を塞いでしまうのです。
DHTは、皮脂腺を活発にするだけでなく、その後、脱毛を促進する脱毛因子TGF-βを生成してしまいます。
髪の毛は同じものがずっと生えているわけではありません。おおよその期間は、成長期が2~5年、退行期が2~3週間、そして2~3ヵ月の休止期を経て抜け落ちます。この3つのサイクルで新旧の毛髪が入替わっているのです。しかし、AGAの場合、右下図の赤い矢印のようにヘアサイクルが短くなり、毛髪が十分に成長しない状態となるため、細く柔らかい毛のまま抜けることを繰り返してしまうのです。